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- > 特集第2回「これからは法人も資産運用の時代~会社のお金を賢く管理する~」

今日、ネットバンクやネット証券をはじめ、法人向けの口座開設が可能となり、法人における余資の運用が注目されている。社内に内部留保している資産をただ普通預金で寝かしておくのではなく、定期預金やMMFなど流動性のある金融商品を短期間で運用する動きがでてきている。例えば、年数回ある法人税・消費税を分割納付サイクルに合わせて定期預金を組むなどの運用方法が考えられる。
今回、FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社 の福田啓太氏に、法人における資産運用の可能性と、その注意点について伺った
- Q:法人の資産運用について、その時代的な背景と経緯について教えてください。
A: 日本の経済は、高度成長期から安定成長期、そして低成長期へと移ってきたわけですが、高度成長期においては、事業で得た利益は事業に再投資するのが当然であり、法人の資産を金融商品で運用するという発想はありませんでした。
高度成長によって日本経済が発展していくと、自動車工業や鉄鋼業などの製造業の輸出が拡大したことによって、後に日米間の貿易摩擦を引き起こすことになります。やがて日米構造協議によって、日本は内需の喚起を要求され、そして円安の是正のために為替相場は急激に円高へシフトしていきます。
その結果、国内の金利は低下し、資金調達のコストは低くなりますが、その一方で本業である事業の先行きが懸念される状態となっていきます。そのような状況の中で注目されたのが、余剰資金の不動産への投資でした。それがいわゆる財テクの走りです。やがて、不動産投資によって利益を得ることで株価も上昇し、不動産と同時に株式投資も行うという財テクブームが現れてきました。それが平成バブル時のひとつの行動パタンであったわけです。
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バブル崩壊の最終局面では、地価も株価も急騰する事態となり、90~91年の頃には金融当局が、今では考えられないほど金利を引き上げて、それによってバブルを抑え込もうとしていました。その結果企業は資金を調達できなくなり、さらには借金返済のために物件を売却することによって、不動産価格は下がっていき、それと共に株価も下落していきました。このように、早い者勝ちで不動産も株も売られ、加速度的にバブルの崩壊が進んでいったわけです。その動きに遅れた者は、借金だけが残るという羽目に陥り、企業は次々に倒産、一気に景気も悪くなり、株価も不動産の価格も益々下落する負のスパイラルを引き起こしていったのです。こうして財テクブームはあっという間に終わりを迎えました。
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これ以降は、法人は本業の立て直しに追われることになります。そしてバブル崩壊後の反省点として、株主の権利などについての議論がなされるようになり、企業が余資を持っているのであれば、本業に投資するか、株主に還元するべきであるということで、特に大企業では資産運用という発想はなくなっていきます。
以上が、経済史を踏まえた、時代別資産運用に対する考え方の違いです。

- Q:法人が一時的に保有する支払準備金などを、短期の定期預金やMMFなどの金融商品で運用することは有効ですか? また、その注意点はありますか?
- A:単純に一定期間保有することが決まっている資金であれば、安全性を確保しながら、なるべく高い金利を提示している商品で運用するということは考えられます。ネットバンクやネット証券など、新しく金融業界に参入してきたところでは、メガバンクに比べて法人の取引を広げる手立ての1つとして、そのような金融商品の提案はこれからも行われていくと思います。
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ただし、思いがけない資金需要に備えて、いつでも短期借入ができる枠を作っておくということも大切です。そのため経営者としては、いざというときに融通をきかせてくれるメインバンクとの取引関係も無視できない為、資産運用は総合的な判断の中で考えていかなければなりません。
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- オーナー企業であれば、定期預金やMMFだけではなく、株式などでアクティブに資産運用をする企業もあるでしょう。
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- また、学校法人や財団法人などの非課税法人では、事業運営費に充てる為の資金運用であれば、運用で得られた収益に対しては課税されない為(※1)、事業資金の一部で資金運用を積極的に行っているところもあると思います。
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※1:所得税法第11条「公共法人等及び公益信託等に係る非課税」により公共法人は所得税を課さないことになっております。
- Q:現在、ネットバンクなど新しく金融業界に参入してきた企業が、法人向けの金融商品を多く提案していますが、その信用度やリスクなどについて、どのように考えれば良いでしょうか?
- まずは、資金を預けたり、金融商品を購入する段階で、リスクとリターンのバランスを考えてしっかりと判断するのはもちろんのことですが、その後も、資金を移動させた金融機関を、継続的にウォッチしていく必要があるでしょう。最近は格付けそのものについて信頼性が疑われることもありますが、それでも1つの手掛かりになることは確かだと思います。しかし、格付けというのは変化していきます。金融機関の合併などといった事態も頻繁にある為、格付け会社は、格付けの変更を発表する前に見通しを出します。したがって継続的にチェックする必要があります。
- Q:現在、仕組債を運用されているところも多いと思いますが、仕組債についてどのように取り組めがよいのか。
- A:基本的に、仕組債はデリバティブを使って金利を上乗せしているわけですが、ある部分はブラックボックスになっており、マーケットの動きによっては金利が低下して最悪ゼロクーポン状態になることもありえます。満期は長いもので30年ほどありますから、そうなったら、金利ゼロ状態で償還を待つか、大きな損失覚悟で換金するかしかない状態となってしまいます。
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サブプライム問題からリーマンショックという状況を経て、マーケットの環境がまったく変わってきましたので、現在ゼロクーポン(※2)状態の仕組債は世間に山ほどあると思われます。財団法人、学校法人、医療法人などでは、仕組債を少なからず持っているケースがあります。それに対して、今後どう対処したらいいのかということについては、その仕組債が対象としているマーケットの値動きによる仕組債の価格感応度を確認し、それをふまえて今後の資金計画の見通しを立て直すことが大切です。
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※2:ゼロクーポンとは、利子を受け取るための権利がない債券のこと。額面よりも割り引いた価格で販売されて、償還時に得られる償還差益が収益となる。
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仕組債を利用する場合、利回りの良さばかりに注目してしまいがちですが、金利を生まない資産が塩漬けになるリスクを考慮して、早期償還の確からしさをまず一番の選択の条件とすべきです。
- Q:金融商品の種類と特徴について教えてください。
- A:一般的に金融商品は、「流動性」「安全性」「収益性」の3つの特徴で考えることができます。例えば、普通預金、MMF、MRFなどは、流動性に優れ、安全性も高い商品といえます。
一方、株式は高い収益性を期待でき、上場株式は通常流動性も高いですが、大きな価格変動リスクがあるので安全性は低くなります。
国内債券で国債や格付けの高い社債などは満期償還まで保有する場合は、普通預金、MMF、MRFなどと同様に安全性は高いですが、金利変動によっては中途換金時に元本を割り込むこともあり、流動性はやや劣ります。そのかわりに収益性は普通預金、MMF、MRFなどに比べて高めになります。
債券の格付けは最上級AAAからAA、A、BBB、BBとなると、段々元利金の返済が滞るリスクが高まります。そのかわりに利回り=収益性が高くなります。
投資信託は、国内公社債に投資するものから海外株式や商品市場に投資するものまであり、投資対象によって収益性と安全性が異なります。
仕組み債は、個々の商品の条件によって収益性と安全性は千差万別ですが、通常の債券よりも流動性や安全性が劣る分、収益性が高いといえます。
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- 以上のように「流動性」「安全性」「収益性」の3つの特徴を勘案して、短期、中期、長期などの資金目的を明確にして、どの程度のリスクを取ってどの程度のリターンを目指すのかを検討したうえで、適切な商品選択を行うようにしましょう。
- 「何を目的とした運用なのか」という法人単位での資産運用ポリシーを明確に
- 今日、金融商品は非常に複雑化してきています。例えば、預金の種類でも仕組預金などというものも登場し、それぞれの金融商品について、その性質をよく見極める必要がでてきました。また、それらの金融商品を選択する際には、どれだけのリターンが期待できるかということと同時に、そのリターンを得るために、どのようなリスクをどの程度までとるのかをこれまで以上に慎重に判断していかなければならなくなったといえます。特に判断の難しい場合や、すでに購入した商品に問題が生じた場合などは、商品提供した業者の説明だけで判断するのではなく、中立的な専門家のセカンドオピニオンをとることも考えた方が良いでしょう。
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- すでにお話ししましたように、金融商品の3つのポイントは「流動性」「安全性」「収益性」です。その中で、法人として何を重視して運用を行うのかというポリシーを、あらかじめ決めておくべきでしょう。そして、運用ガイドラインや意思決定のプロセス、最終責任者、リスク管理ルールなどを明確にすることが大切です。
これらの整備についても、必要であれば経験豊富な専門家を活用すべきです。
図3:金融商品選定において考えなければならない3つの基準